九州アートディレクターズクラブ

QUALITY SHIFTについて

2020年より、九州ADCではアートディレクションの考え方の指針として「QUALITY SHIFT」(以下QS)というコンセプトを掲げ、教育活動の実施やアワード(審査会)の開催をおこなっています。

 

そもそもQSのアイデアは、ネットを通じて様々な人が常時繋がり、その結果として大きな変化が起きている現在(イマ)と未来(コレカラ)において、アートディレクターの役目は何なのか、について考えはじめたことからはじまりました。

 

過去には田中一光氏、近年ではサムライの佐藤可士和氏が「アートディレクターとは医者のような存在である」と例えました。このメタファーに沿って考えるとすれば、患者は何らかの課題(病気)を抱えているからこそ、アートディレクターのもとを訪れることになります。そして、いまその課題(病気)の傾向に変化が起き始めています。

 

大きくいえば戦後から平成までの課題とは「技術的課題」でした。「技術的課題」とは「不便さの解消」「より快適な生活環境づくり」といった分野における、正解が存在し技術や発明によって解決することができるものがほとんどです。日本の戦後の復興から発展と歩みをともにしてきたアートディレクションの仕事では、この「技術的課題」の解消をおこなった企業や組織の「商業的課題(売りたい・知ってもらいたい)という課題の解消に尽力してきました。

 

しかし、いま世の中に蔓延している課題は技術の発明だけでは解決できない、人と人のコミュニケーションであったり、便利さが引き起こした環境問題などの弊害であったり、と複雑化しています。(それらはWICKED PROBLEMまたは適応課題ともよばれています。)

 

このような高次元の課題解決には外側からその人の心を動かし、行動を変えさせることが求められますが、理論だけでは人の心や動きません。もし、この時代に私たちアートディレクターにできることがあるとすれば、それは「デザインの力で人の心を動かす」ことです。私たちはこれまでその能力を主にクライアントからの依頼を受けて「商業的課題」を解決することに使ってきました。しかし、これからはその領域にだけ留まることなく、社会に貢献するような仕事においても自分たちの職能を発揮するべきだ、と私たちは考えています。

 

そのためにもアートディレクターそれぞれが自分の仕事を客観的に見つめ直し、仕事の質をSHIFT(もちあげていく)ためのPHILOSOPHY(行動哲学)として「3つのGOODをベースにしたQUALITY SHIFT」というアイデアをまとめました。

 

このQSは、自分の手がける仕事に対して

  1. 人と向き合っているのか?→ SOLUTIONAL GOOD
  2. 感性と向き合っているのか?人の心を動かす美しさがあるのか?→ VISUAL GOOD
  3. 社会と向き合っているのか?→ SOCIAL GOOD

という3つの質問を問うことを基本としています。(QSの詳細につきましては、この頁内にあるPDFまたはyoutube画像をごらんください。)

 

また、アートディレクターの立ち位置も「ビジネスに関わる人としての立ち位置」「クリエイターとしての立ち位置」「地域・社会の一員としての立ち位置」の中間にあるもの、と考えています。

 

このQSの実現のためには、従来までのいわゆるクリエイティブワークだけに留まらないより広い視野や知識が求められます。九州ADCではその学びの場として「QUALITY SHIFT ACADEMIA」という学習機会の提供もおこなっています。

 

また、全九州エリアのクリエーターが自分たちの作品をもちよる審査会「九州ADCアワード」の開催もおこない、「学習機会としてのアカデミア」→「日々の仕事での実践」→「アワードでの評価」→「新しい学びの意欲」がループするような流れをつくることで、九州全体の仕事の質をより高めていきたいと考えています。

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