九州アートディレクターズクラブ

BATON TALK

Posted on 2018-03-4

児玉和音さんからバトンを託されました、PRISM!の中村圭太です。

「自分にまわってくることはないだろう……」と、一読者として更新を楽しみにしていたのですが、先日ご依頼をいただきびっくり! 普段書きなれない長文に、現在、脇汗が止まりません。

 

児玉さんとは、九州ADC主催の「大人の修学旅行」でいろいろな話をさせていただきました。児玉さんのプラスになったかどうか自信はありませんが、二日酔いのガラガラ声で語り合ったのは、僕にとって良い思い出です。

 

最初に、簡単な自己紹介を。

 

8年前に離職した頃、リーマンショックの影響で就職活動が思うようにいかず、当時は未婚で実家暮らしだったことと周囲の薦めもあり、思い切って独立しました。あれから7年が経ちます。今もこうして仕事ができているのはクライアントをはじめ、ご縁があった多くの方々のお陰です。本当に感謝しています。

以前は単発や期間限定の「消える仕事」が多かったのですが、今ではありがたいことに、企業のロゴマークや商品パッケージなど「残る仕事」もさせていただけるようになりました。例えば、創業200年を越えるお菓子屋さんへ向けて、ブランド価値の向上を目指した提案を行っています。プロデューサーやWEBデザイナーの製作チームが一丸となり、既存商品を活かしながらの新商品開発や、老舗としてのあり方について頭を悩ませる日々です。

 

さて、昨年末こんなことがありました。

同業者でもある友人たちとの忘年会で「どうやって仕事を獲っているか?」という話題に。

「インターネットのお問い合わせフォームから」という堅実な人もいれば、「クライアントから数珠つなぎのように、次から次へと紹介を受けます!」という心底羨ましい人もいる中、僕は「気になった人のところやお店に出向いて、それを糸口に仕事を見つけています。HPからの問い合わせがあてにできないので、足で稼ぐしかないんです」と答えました。

その後、自分の発言を振り返ってこう思いました。

「足で稼ぐって、まるで刑事みたいだなあ……」

 

気になる人やお店を見つけたら、聞き込み捜査を行う刑事のように、何度も通ってその場に漂う空気感に触れます。現場百遍ではありませんが、回を重ねるごとに「なぜこの人やお店に興味を持ったのか」、その理由が自分の中で明確になっていきます。

 

そして、証拠を集める刑事のように、デザインの手がかりとなる情報を収集します。特にクライアントの信念やルーツに重点を置き、それに対して自分に何ができるのか。知りたいことは芋づる式に増えますが、手間を惜しまず、納得できるまで調べます。

 

自分で書き始めておいて何ですが、例え話とはいえ、クライアントを容疑者に見立てるのが大変心苦しくなってきました……。が、このまま続けます。

 

最後に、取り調べを行う刑事のように、あらゆる側面から考え抜いたデザインを提案します。クライアントの予想を良い意味で裏切って、笑顔で「参った!」と喜んでいただけたとき、それはデザイナー冥利に尽きる瞬間です。

 

どちらの職業にも言えるのは「日々の暮らしをまもっていること」だと、僕は思います。

刑事の仕事は街の治安を維持し、人々が安心して暮らせるようにすることです。デザイナーもまた、その仕事をとおして、生活に必要な情報をわかりやすく伝える手助けをしたり、街の景観に彩りを添えたり、それがひいては「日々の暮らしをまもること」につながっているのではないでしょうか。少々強引かもしれませんが、これが僕の考える「デザイナー」と「刑事」の共通点です。

 

自分が「足で稼いで」得た情報や培った感性を駆使して、日々の暮らしが豊かになるデザインを生み出すことを目標に、これからも頑張ります。

次回のBATON TALKは・・・

pass the baton!

僕がバトンを託すのは、北九州在住のアートディレクター・デザイナー岡崎友則さんです。

九州ADC以外でもご一緒することが多い岡崎さん。
同い年の彼は北九州に対する愛情が深く、小倉の街並をグラフィックで表現するなど、地域色あふれた制作をされています。
また、講演会などで良い話を聞いた後、深夜の帰宅にもかかわらず、寝ている奥様をわざわざ起こして語りだすほどの熱い男!

そんな岡崎さんのどんなお話が読めるのか、次回の更新が楽しみです。

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