九州アートディレクターズクラブ

BATON TALK

Posted on 2018-01-29

吉本清隆さんからバトンを受けました、杉村武則と申します。

 

吉本さんとの出会いは2015年。

花魁居酒屋。

 

九州ADCグランプリ受賞、作品全体から感じる究極のストイックさ、そしてプロフィール写真はちょっぴり怖そうだし…  これ、下手したら一発殴られるんじゃないかとビクビクしながらご挨拶しました。

ところが、「君が杉村くんかー!」と優しく歓迎してくれて、色々と親身にお話ししてくださり、めちゃくちゃ嬉しかったです!

 

そんな憧れの吉本さんや、兄貴的存在の佐藤かつあきさんたちは、出す賞出す賞、軒並み入賞・入選しています。

本当にすごいなぁといつも感動しています。

 

 

僕はいつも落選してます。

 

以前、お酒の席で

吉本さんから「諦めずに出し続けて新人賞目指さなんよ!」と励ましていただいた時は、嬉しくて涙出そうになりました。

かつあきさんから「杉村くんは無冠の帝王やねーww」と言われた時は、バリカンでそのロン毛剃ったろかと思いました。

 

 

 

駄文で恐縮ですが、ここから僕の話を。

 

 

僕は熊本の高校卒業後、福岡の日本デザイナー学院に進学しました。

この学校で恩師の春髙先生と出会いました。18歳の僕には、もう何もかもがかっこよすぎて衝撃でした。

もちろん春髙ゼミを専攻し、在学中はインターンでもお世話になりました。

 

僕の中で忘れられない春髙さんの言葉に

「ゴミ以下」というものがあります。

 

 

「こんなデザイン、ゴミ以下ですよ!」

 

 

授業中、適当に課題をやってきていた友達が、先生からこう言われながら怒られているのをニヤニヤと聞いていました。

(ちなみに僕は優秀だったので言われたことはありません)

この「ゴミ以下」というキラーフレーズは僕らの中でブームになり、「お前のデザイン、ゴミ以下やなぁ!」なんて冗談まじりにディスりあっていました。

 

 

卒業後に上京、デザイン事務所に就職しました。

そこでは某企業の、スーパーやコンビニ、自販機まわりのキャンペーンPOPを作る仕事がメインでした。代理店の下請けだったので、代理店が作ったメインビジュアルをもとに、文字通り下りてくる仕事をタイトなスケジュールの中でこなし、こちらで紙や印刷方法を選べることもなく、データを作っておしまい。気づいたら世に出ていることがほとんどでした。

流れ作業で作るチラシやハガキには正直愛情なんて込められる訳がなく、自分が目指していたデザインなんてちっとも出来ずに「俺、このままでいいのかなー」なんて迷っていた時期でした。

 

 

 

そんな時、

自分が手がけたものが、ぞんざいに扱われゴミとなって道端に捨てられている光景を目の当たりにしました。

 

 

 

 

えっ……   ゴミやん…。

 

ゴミ以下ですやーーん!!!

 

 

 

かなりショックでした。

 

 

 

「俺はゴミを作っていたのか。」と、そこで初めて自分の実力のなさに気づきました。

「たかが」とバカにしていたチラシをはじめ、世の中の様々なデザインを改めて集めなおし、いちから学ぼうと喝を入れました。目指すは「捨てられないデザイン」。その日をきっかけにデザイナーとしての一歩が始まったと思っています。

 

 

 

そこから何年か経った後、

ふと立ち寄った本屋で当時の大河ドラマ「龍馬伝」のポスターを見かけました。

 

タイトル文字、写真、レイアウト、印刷…

その頃僕が基準にしていた「ゴミになる・ならない」。そんな低い世界とは遥かに次元が違う、美しくて神々しい、まさに自分が憧れていたもの全てがそのポスター1枚に詰まっていました。

火の鳥じゃないですが、とてつもなく高い場所から真理を問いかけてくるように、無言で輝いているポスターを釘付けになって見ていたら涙が出てきて、本屋の壁に向かってヒクヒクと泣いてました。なんか今思うとキモいですが。

 

 

その後、運良くタイミングが重なり、その「龍馬伝」を手がけた居山さんのもとで4年近くお世話になりました。相変わらず自分の実力の無さに情けなくなった4年間でしたが、広い視野で物事を考えられたり、自分が手がけた商品デザインをお客さんが楽しそうに眺めている光景を見た時は、この上ない幸せでした。

自分の事務所「OVAL(楕円)」という名前は、今までお話ししてきた経験や思いからきています。

デザイナーとしては、まだまだ美しい正円は描けず、カタチはちょっと歪な楕円かもしれません。

しかし、使い捨てではなく長く愛される日用品のように、丁寧に使いたくなる佇まいや、経年変化の味わいも楽しめるデザインを心がけよう、という思いを込めています。

 

そして何より、いいデザインはいい人間関係から。

まずは誰からでも頼っていただけるような人間になろうと決めました。

 

言ってしまえば当たり前のことですが、この当たり前を大切にしていこうと思います。

 

 

 

まぁ、その前に、

お酒の席でいつも暴れている「ゴミ以下」の自分自身をどーにかせろって話ですけどね f(^o^) へへ

 

 

 

次回のBATON TALKは・・・

pass the baton!

次にバトンを渡すのは、
2016年末に開催された九州ADC主催の「大人の修学旅行」で僕と同じく(たぶん)酔ったノリで九州ADCに入会した、福岡会員の児玉和音くんです。
ちょうどその時、宿が同じ部屋で仲良くさせていただきました。(夜中酔っ払って暴れてゴメンね)
2人とも丸メガネに坊ちゃん刈りと、なんだか勝手にシンパシーを感じています。
もっともっと児玉くんのことを知りたくて無理やりバトンを渡します笑
それでは児玉くん、よろしくお願いします!

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